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美しいこと(上・下)/木原音瀬

アクセス解析のサーチワードで一番多いのが田亀源五郎。路線変更すべきか本気で悩むあねこです。

待ちに待った木原さん新刊。下巻の発売で上巻も読み直して通しで感想です。

美しいこと(上・下)/木原音瀬/ホリーノベルズ
お気に入り指数★★★★★

【紹介文】
松岡洋介は週に一度、美しく女装して街に出かけ、男達の視線を集めて楽しんでいた。
ある日、女の姿でナンパされ、散々な目に遭い途方に暮れていた松岡を優しく助けて
くれた男がいた。同じ会社で働く、不器用、トロいと評判の冴えない男、寛末だった。
女と誤解されたまま寛末と会ううちに、松岡は「好きだ」と告白される。友人になりたい
松岡は、女としてはもう会わないと決心するが…。


「俺はホモじゃない好きになった人が男だっただけだ」とはBLの王道ですが、「好きになった人が男だったのがどうにも受け入れられない」というのが延々続くのがすげえ。
だってそこをさらりと許すのがBLなのですから。強姦しようとされようと、ノンケだろうがゲイだろうが、世間的にはアウトだろうが、BL世界ではその気もない男ですら魔法をかけられたように容易く男を受け入れる。現実にはねえよそんなの、と誰もが思いつつフタをしてBLという夢の世界で遊んでいたいと願う乙女たちに、目を覚ませとばかりに現実の男のどうにもならなさを突きつけてくれましたな……。
あーほんとにシビアだ。

女装した松岡←寛末な序盤は、寛末が松岡好き好きモードでとにかく一途。
やがて寛末に惹かれ、好きなのだと自覚する松岡。いつまでも女のままではいられないと思い男だと決意の告白した途端にドン引く寛末。激しい拒絶を受け傷つきながらも、何とか受け入れてもらえないかと努力する松岡。
挙げ句の果てにはBLのセオリー「寝てみてばわかる」も玉砕。
相変わらず情け容赦のない木原リアリズムで、受の松岡くんめった切り。
恋は苦しい、というのは誰もが持っている体験ですが、それをまざまざと、懇切丁寧に描かれるとこっちまで呼吸困難になりそう。
だがその呼吸できないほどのキリキリちりちりとした神経剥き出しの痛さが、木原作品の持ち味。

本当に酷いことをするのはやさしい男だと思う。
暴力をふるうとか言葉で傷つけるとかそういう物理的なひどさは、もちろん心身ともに傷つけるけれども、その根底には独占欲だとかわかってくれよという甘えだとかがある。それを詰り責めるのは容易い。
でも、やさしい男がやさしさ故にしてしまう酷いことには、反撃の余地がない。
寛末も、やさしい男だ。やさしくて誠実な男ほど真に酷いことをする。
「酷いことをする攻」というのは多々あるけれども、この種類の酷さは格別だ。
女性なら、リアル社会において寛末のような男の一人や二人、心当たりがあるのでは?

松岡は、その寛末のやさしさ故に男でも受け入れてくれるかもしれないと思い、拒絶されて傷つき、どんどん萎縮していく。見た目もかっこ良く仕事のできるイイ男なのに、寛末に受け入れられないというだけで心が壊れていく。
松岡が傷つき、恋すること愛されることに臆病になっていく過程が丹念に描かれていて、何だかこっちまで胃がキリキリしてくる。
「同じ男に三度も振られたくない」という松岡。
そりゃそうだ。思わせぶりなやさしさでつなぎ止められては近寄ろうとして落とされる。「大好きな友達」として大切にされても、望んでいるのは友達じゃないのだから生殺しだ。
心を屈めて小さくなって苦しむ松岡が本当にやるせなくて、何度も泣けた。

寛末は酷いことをしているけれども、それがリアルな現実なのだと思う。
誠実であればあるほど、優しくあろうとすればするほど狡くて酷い男だな。
でも寛末を嫌いにはなれない。
「恋愛感情は持てないけど友達としては離れたくない」
それは寛末のわがままだ。でも「離れたくない」という感情がどうしてかということに、寛末は気づいてくれたので救われる。
ラストの寛末の手のひらを返したようなラブラブモードが、傍から見てるとムカついたりするんだけれども、そういえば案外一途で情熱的なキャラだったなと思い出す。

対比するのもどうかと思うが「箱の中」は、受が男に愛されることを受け入れられずに苦しんだ物語だった。今作は逆。受け入れられないのが攻から受に変わると、どうしてこんなに腹立たしいのか。それは、自分が受ける性であるからなのかもしれないとふと思った。
BL作品の中の受に自分を重ねる気は毛頭ないが、受を「こちら側」に見ている節はある。「こちら側」とは「男を受け入れる側」だ。特に同胞意識があるわけでもないけれど、受が報われて欲しいと常にどこかで願っているのかもしれない。

楽しい面白さではない。でも「箱の中」がBL界に一石を投じたように、この「美しいこと」もBLという世界にまったく違う色を加えたような気がする。
なんだか小難しく長々書いてしまったけれど、BL好きなら読むべき一冊。
細かいあらすじは、懇切丁寧でわかりやすいBLブログがたくさんあるのでそちらでひとつ。
というかできれば読んで自分であの流れを感じてください。

comments

こちらでははじめまして、okapiです<(_ _)>

>情け容赦のない木原リアリズム

フィクションの中でも限りないリアリズムを追求し、なおかつ王道BL展開に乗っ取らない展開なので、本当に最後まで気が抜けずにモヤモヤしながら読者の心をつかんではなさない。木原マジック☆万歳!としか言いようがないです(^_^;;)ゞ 読んだ後、しばらく木原ワールドで放心状態になってます。やっぱ大好きだ~~

姐子さんは「箱」「檻」でBLに舞い戻られたということですが、その読書量にびっくりです。まさに乾いた土が水を吸い取るように…ステキです。以前からもちょくちょく覗かせていただいていたのですが、これからも遊びにきますね。

それからリンク、こちらからも貼らせていただいたのでよろしくおねがいします(事後承諾かよ)

>okapiさん

コメントありがとうございます!嬉しくて挙動不審です。

>フィクションの中でも限りないリアリズムを追求し、なおかつ王道BL展開に乗っ取らない展開

まさにこの部分が、木原さんにしかできないことだと痛感します。普通はもう救済するだろうと思われる段階を遥かに越えて、まるで魂も体もすべてを相手に明け渡せるまではハッピーエンドにしねえぞコラ!と、我が子を谷底に落とすような所業です。すごいです。
それをするからこそ、研ぎすまされた名作が生まれるんだろうなあとつくづく思いました。何か書いてる本人もそうとうバッサリ自らの刃で疲弊してそうですが。
BLってすごいなあと改めて感じた一作でした。

okapiさんが早く放心状態から抜け出せますように。
リンクありがとうございました~!
とっても嬉しいです!

姐子さん、こちらでははじめまして!こんにちは!昨日は楽しかったです!ありがとうございました!姐子さん、おもしろかったです!

姐子さんのところ、何度かお邪魔してました~!失礼しました(^^)

寛末についてすごく上手く書かれてますね~!うんうんうなずきながら読んでしまいました!
そして、こんな・・・BLではスルーしてしまえばいいような感情や行動を持ったキャラを突き詰めて書くのが木原さんですよね~☆もう大好きです。ひどい寛末だって愛しい。
そんな私だってやっぱり下巻の寛末はイライラしながら読んでましたけど、それでもやっぱり読み終えて、いろんなブログ様の感想を読ませていただいて、自分の中で改めて寛末について考えた時、やっぱりすごく愛しいんですよね。
木原さんの人間描写は改めてすごいなと感じた1冊でした。

また今後も遊びに来させて下さいませ~!

>mikuさん

いらっしゃいませ!
昨日は楽しかったです~。

>ひどい寛末だって愛しい。

やっぱりmikuさんやさしい、といかもうMじゃ……!
私は愛しいまではいかないかもしれんが、もうしょうがねえなあ的です。愛すべき駄目男なんですかね寛末。
でもやっぱり中身が出るまで踏みたいです!

mikuさん宅には以前から通わせていただいてます。
コメントありがとうございました~!

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あねこ

Author:あねこ
しばらくぶりにBLにハマりました。

■好物:年下攻、オヤジ受、ヘタレ攻、ツンデレ受、漢攻×漢受、襲い受、軍服、江戸~明治~大正
■BLダメツボ:ロリショタ受(攻めは大好き)、乙女受

★トンチキ企画参加してます!
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